腕振り運動「スワイショウ」で全身が若返る

●呼吸がらくにできるようになる

雪谷大塚クリニック院長の雨宮隆太先生はは、呼吸器専門医として、これまで30年以上にわたって、呼吸法とそれに関連する運動の研究を続けてきました。

雨宮先生のクリニックでは、内科、外科など幅広く診察していますが、患者さんの7割は呼吸器系の悩みを抱えてやって来ます。いわゆるカゼ、ぜんそく、気管支炎、閉塞性肺疾患が多く、まれに肺ガンの患者さんもいらっしゃいます。

肺は、自分では動くことができない臓器で、小さくて、柔軟な風船(肺胞)の集まりのようなものです。年々死亡者数が増加しているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、肺胞が壊れたり、弾力が低下して、膨れ上がって弾けそうな風船状態(気腫という)になったりして、悪化していきます。

これを防ぐには、呼吸法(意識的に行う呼吸)がとても重要になってきます。

呼吸器系疾患を患っている人に限らず、呼吸法は大切なものです。というのも、30歳のときに肺活量が100%あるとすると、70歳ではその量が75%に減少します。喫煙者はこの減少がもっと大きく、年を取れば取るほど、肺がどれだけ元気かという要素が、健康の維持に直結しているからです。

現に、雨宮先生のクリニックで月1回開催している呼吸法教室の参加者に感想を聞くと、「階段を上るのが嫌だと思わなくなった」「お通じがよくなった」「よく眠れるようになった」「肩こりがよくなった」「腰痛がよく
なった」「ウエストが細くなった」といった、さまざまな反応が返ってきます。

このように、呼吸法は、呼吸と肺の問題にとどまらず、私たちの全身の健康状態と深くかかわっているのです。

雨宮先生は、太極挙の楊進先生と知り合い、多くの臨床を行ってきましたが、これらの研究を通じて、新しい知見が次々とわかっています。

特に、太極拳の準備運動として行われる「スワイショウ」(腕振り運動)は、下半身をゆるめる運動としても、呼吸法、医療的な理学療法としても、非常に有用なものです。

通常、人問は、腰から上、首から下の「胴体」を意識して動かすことを行っていません。

このため、加齢や生活習慣によって、胴体が萎縮し、硬くなり、それが病気や症状の隠された原因となつていることが少なくありません。

実際に、ぜんそくやCOPDに悩む人の体を診察してみると、胴体の筋肉が硬化し、肋骨と肋骨の問の動きが悪くなっているのです。

こうしたケースでは、まず、スワイショウで、萎縮した胴体の状態を改善させることが大切です。胴体が柔軟性を取り戻すだけで、呼吸が以前よりらくにできるようになるからです。

 

 

●運動でリラックスできる唯一の方法

ところで、皆さんは「腰」といったとき、どこを思い浮かべますか。日本人の多くは、腰と聞くと、お尻(骨盤)をイメージします。しかし、正しい意味の「腰」は、いわゆるウエスト(腰椎=腰の部分の背骨)を指すのです。

スワイショウを行うときの一番のポイントは、ここです。

お尻ではなく、ウエストから順番に、胸を主体にひねります。普段、意識的に動かすことのない、「腰から首まで」をダイナミックに動かすことに意味があります。

その結果、萎縮した胴体がほぐれ、全身がリラックスできるのです。まさに、スワイショウは、運動しながらリラックスできる、唯一の健康法と言えるでしょう。

また、肺活量の少ない、呼吸器疾患の患者さん向けのリハビリテーション(機能回復訓練)では、理学療法士が、患者さんの胸郭(胸部の外郭を形成する部分)に手を添え、胸郭をひねって肋骨と肋骨の間を広げ、呼吸がよくできるようにする治療法があります。

スワイショウは、この理学療法そのもの。自宅で、一人でできる理学療法なのです。

ちなみに、スワイショウを行うさい、呼吸法の観点から言えば、体を回転させ始める前に息を吸い、体を回転させながら息を敵いていくのが理想です。

息は、鼻から吐くのが理想ですが、やりにくいと感じる人は、口笛を吹くときのように、口をすぼめて息を吐いていくと、やりやすいはずです。