爪もみが耳管開放症の補助療法として有効

●毎日行うことが大事

金沢市立病院耳鼻咽喉科科長の石川滋先生はこれまで、数多くの耳管開放症の患者さんを診てきました。その中で、患者さんに共通の症状があることに気づきました。それは末梢循環障害です。

耳管開放症の患者さんは、顔色が悪かったり、立ちくらみや手足の冷えをよく訴えたりします。また、肩こり、頭痛、便秘を合併することも少なくありません。これらの症状は、末梢循環障害と深く関係しています。

末梢循環は、全身の血管や内臓の働きを調整する自律神経に支配されています。そこから石川先生は、耳管開放症と自律神経の関係を強く疑うようになりました。

耳管開放症と自律神経の関係については、1980年に、開西医科大学の教授だった故・熊澤忠美先生が示唆されています。熊澤先生は、交感神経が優位だと耳管は開きやすく、副交感神経が優位だと閉じやすいと報告されています。耳管は、自律神経に支配されていると考えられるのです。

 

 

自律神経のうち、交感神経は活動時に、副交感神経は休息時に活発になります。現代のようにストレスが多く、常に交感神経が刺激されていると、耳管が開きっばなしになって耳管開放症の症状が出ることは、じゅうぶん考えられます。

そこで石川先生は、副交感神経を刺激する代表的な家庭療法である「爪もみ」で、耳管開放症への効果を検証し、昨年の日本耳鼻咽喉科学会で発表しました。

当院の耳鼻咽喉科で、耳管開放症と診断された患者さん114名に、爪もみをやってもらいました。やり方は、手の指の爪のつけ根を親指と人差し指ではさみ、ギュッ、ギュッと押すだけです。

耳管開放症は、低い昔が聴こえにくいという症状があるので、爪もみを始める前後の聴力の変化を調べました。

その結果、両耳とも改善が47人(41・2%)、片耳だけ改善が16人(14・0%)、片耳は改善したが、もう片耳が悪化したのが30人(26・3%)でした。

これらを合計すると93人で、81・6%の人に効果があったのです。一方、悪化した人は18人で、不変の人は3人でした。

このことから、爪もみは耳管開放症の補助療法として有効だと判断できます。効果は即効的ですが、持続しませんから、毎日行うことが大事です。また、爪もみを行うときは、交感神経を刺激しないように、何も考えずに行うことがポイントです。